金管四重奏 華麗なるワルツ イ短調 Op.34-2 楽譜
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金管四重奏 華麗なるワルツ イ短調 Op.34-2
フレデリック・ショパン
Valse brillante in A minor, Op.34 No.2
FrédéricChopin
編成はTp.、Hn.、Tbn.またはEup.、Tubaです。
サックス四重奏、木管四重奏、クラリネット四重奏版は発売中です。
華麗なるワルツなのに華麗ではないメロディーを、ぜひお楽しみください。
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ショパン《華麗なるワルツ イ短調 Op.34-2》は、非常に面白い作品です。
一見すると「華麗なるワルツ」という華やかな題名なのに、実際に聴こえてくるのは華やかさよりも、哀愁・孤独・ためらい。
ショパンのワルツの中でも、とりわけ詩的な作品です。
1. 基本データ
| 項目 | 内容 |
| ---- | ---------------------- |
| 作曲者 | フレデリック・ショパン(1810–1849) |
| 曲名 | ワルツ第3番 イ短調 |
| 作品番号 | Op.34 No.2 |
| 調 | イ短調(A minor) |
| 速度 | Lento |
| 編成 | ピアノ独奏 |
| 作曲年 | 1831年頃? |
| 出版 | 1838年 |
| 演奏時間 | 約5分30秒 |
| 献呈 | C. d'Ivri男爵夫人 |
作曲年については「1831年」とされるのが一般的で、確定しているわけではありません。一方、出版は1838年です。
2. 最大のポイントは「華麗なるワルツなのに華麗ではない」
ここがこの作品の一番面白いところです。
Op.34は3曲セットで、
* 第1番 変イ長調 Op.34-1
* 第2番 イ短調 Op.34-2
* 第3番 ヘ長調 Op.34-3
となっています。
ところが第1番と第3番が比較的明るく活発なのに対して、第2番だけは、
Lento(ゆっくり)
で、短調。
つまり、
「さあ、華麗なワルツを踊りましょう!」
という感じではありません。
むしろ、
「ワルツの形を借りて、心の中を語っている」
と考えたほうが、この曲の本質に近いと思います。
研究でも、この曲ではワルツ本来の舞踏的な運動感がかなり弱められ、むしろ悲劇的・抒情的な性格が前面に出ていると分析されています。
3. 実は「ショパンのワルツ観」が変化した時期の作品
ここも重要です。
ショパンはポーランド出身ですが、ワルツはウィーンを中心とするヨーロッパの舞曲として大きく発展していました。
ところがショパンは、単純に「舞踏会用のワルツ」を作ったわけではありません。
彼は、
ワルツ=踊るための音楽
から、
ワルツ=ピアノで聴かせるための音楽
へと変えていきました。
Op.34-2はその変化が非常によく分かる作品です。
イ短調という調性とLentoという速度から、舞踏会のワルツとは異なる世界の作品と位置付けられます。
4. 冒頭が非常に特殊です
この曲を聴くとき、ぜひ最初の16小節を注意して聴いてください。
普通のワルツなら、
左手
「1・2・3|1・2・3」
という伴奏を作り、その上に右手の旋律が乗ります。
ところが、この曲の冒頭では、それが少し違います。
* 低音の持続音
* 右手のリズム
* 内声部の旋律
という、かなり特殊な声部配置になっています。
つまり、
「メロディーが一番上にある」とは限らない
のです。
ここはピアノ演奏でも非常に重要です。
聴き方
最初は、
「右手の一番上を聴く」
のではなく、
「ピアノの中から誰かが歌い出してくる」
ように聴いてみると、この曲の魅力が分かります。
5. 冒頭の「落ち着かなさ」
さらに面白いのが、冒頭の心理描写です。
冒頭4小節の左手について、「大変落ち着かない」
という性格を持っています。
そして8小節目付近が一つのピークになります。
つまり、
静か=穏やか
ではないのです。
表面上は非常に静かなのに、内面には、
「何か落ち着かない」
「何かを待っている」
「心が定まらない」
という感情があります。
ここが、この作品を単なる「悲しいワルツ」にしてはいけない理由です。
6. 「休符」が感情を作っています
特に16~20小節付近は面白いところです。
18小節、20小節の1拍目に**四分休符**があります。
これは単なる「音がない場所」ではありません。
演奏解説では、この休符をagitation(動揺・焦燥)として捉える解釈が示されています。
つまり、
音 → 音 → 音
ではなく、
音 → 「……」 → 音
となることで、心が一瞬つまずく。
これはショパンらしい表現です。
7. そして突然「イ長調」になる
この曲で特に美しいのが、
第53小節頃からイ長調(A major)
になるところです。
ここまでイ短調で、
悲しい
不安
内向的
だった音楽が、突然、
同主調のA major
になります。
これは単純な「短調→長調」以上の効果があります。
同じ「A」を中心にしているので、
別の場所へ行ったというより、同じ世界が突然明るく見える
ような感じです。
この部分を「幻想を見ているよう」
な場所と捉えています。
ここを、「一瞬だけ記憶の中の美しい世界が見える」
ように演奏すると、とても魅力的だと思います。
8. しかし、すぐにイ短調へ戻る
そして第69小節頃。
再び、
A minor
に戻ります。
ここが非常にショパンらしい。
「長調になったから、問題が解決した」
わけではありません。
むしろ、
「一瞬、希望が見えた。しかし現実に戻ってしまった」
というように聴こえます。
そのため、A major部分を単純に「明るく楽しく」弾いてしまうと、この曲の構造が弱くなります。
9. 全体の構造
この曲は単純な「A-B-A」ではありません。
楽想をA-B-C-D-B-C-D-A-E-A
と整理しながら、全体としては三部形式の変形と説明しています。
非常に大まかに捉えると、
A
↓
憂鬱な冒頭
B-C-D
↓
さまざまな感情が展開
B-C-D
↓
同じ素材が再び現れる
A
↓
冒頭の世界へ
E
↓
最後に新しい感情が現れる
A
↓
最初の世界へ戻って終わる
という構造です。
だから、演奏者にとって最大の問題は、
「同じものが出てくるから、同じように弾く」
ではないことです。
同じ旋律が戻ってきても、その時には意味が変わっているのです。
10. 最後が特に重要
169小節以降には、それまでになかった新しい素材が現れます。
ここは一種の感情的な頂点。
そして177小節以降で再び雰囲気が変化します。([piano.or.jp][1])
そして最後には、冒頭の世界へ戻っていきます。
つまりこの曲は、
「新しいものを次々に出して終わる」
のではなく、
「最後に最初へ戻る」
作品です。
だから最後の冒頭主題は、最初と同じ音符でも、
「最初に聴いたときとは意味が違う」
のです。
これは非常にロマン派的な作曲法です。
11. 「華麗なる」というタイトルについて
ここは誤解されやすいところです。
Op.34全体は1838年に「Trois Grandes Valses Brillantes」として出版されています。
ところが第2番だけを見ると、
Grande=大きな/華麗な
Brillante=輝かしい
というイメージとはかなり違います。
Henleも、この曲はタイトルとは対照的に、dreamy character(夢幻的な性格)を持つLentoとして説明しています。
したがって、
「華麗なるワルツ」
という日本語タイトルから、
「華やかで技巧的な曲」
と考えると、かなり本質を外してしまいます。
むしろ、
「ワルツという形式を使った、非常に内面的な詩」
と考えたほうがいいでしょう。
12. 「ショパン自身のお気に入り」だった?
有名なエピソードがあります。
ショパンの友人で弟子でもあった**スティーヴン・ヘラー**がこの曲を好きだと言ったところ、ショパン自身も「自分もこれが一番好きだ」と喜んだ、という話です。
この逸話は複数の資料で紹介されています。
ただし、これはショパン本人が書き残した一次資料ではなく、ヘラーの回想として伝わっている話です。
ですから、
「ショパンがこの曲を一番好きだったことが確定している」
と断言するより、
「ヘラーの回想によれば、ショパン自身もこの曲をお気に入りだと語った」**
と紹介するのが正確です。
13. この曲の本当の魅力
「踊れなくなったワルツ」と表現できます。
3拍子です。
ワルツです。
でも、踊るための音楽ではない。
ワルツの身体的な動きを止めて、その中に人間の感情を入れた。
だから、
1・2・3
というリズムがありながら、
「歩いている」というより「思い出している」
ように聴こえるのです。
これはOp.34-2を理解する上で、とても重要なポイントだと思います。
演奏するなら、特に注意したい5点
1. Lento=単純に「遅く」ではない
ゆっくりでも、3拍子の生命感は残す。
2. 冒頭の内声を歌わせる
一番上の音だけを主旋律と思わない。
3. ルバートを恐れない
ただし、拍の骨格を失わない。
4. A majorを「単なる明るい部分」にしない
「幻想」「一瞬の光」と考えるとよい。
5. 最後のA minorは冒頭と同じにしない
曲全体を経験した後の「回帰」です。
アトリエ・アニマート
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